株式会社モルフォ(所在地:東京都千代田区、代表取締役社長:平賀 督基、東証グロース市場:3653、以下 モルフォ)は、先端のビジョンセンサーであるイベントベースビジョンセンサー(Event-based Vision Sensor、以下EVS)の実用化を目的とした社内ハッカソンを開催しました。
EVSおよびAIを提供するProphesee社のご協力のもと、EVSを活用し、日常生活での身近な課題等を解決するソリューションを開発し、有用性のあるものについては、将来的な新規事業創出を目指して、開発を継続していきます。
EVSは人の眼が光を感じる仕組みを模した最先端のビジョンセンサーです。一定の時間間隔で画像を出力するフレームベースセンサーと異なり、各画素が一定の輝度変化を検知したときにだけイベントデータ(座標・時間・極性)を出力します。これにより、高速・低遅延、低データレート、低消費電力で変化を検知することが可能です。スマートフォン、外観検査、セキュリティ等の幅広い分野での実用化が期待され、注目度が高まっています。
モルフォは、先端技術への知見を深め、新たな発想でソリューションを生み出すことで、将来的に新規事業の創出に繋げることを狙いとして、ハッカソンを開催しました。
今回はエンジニアと営業が混合となった3チームにて、「アイデア実現度」、「プレゼンテーション」、「技術力」、「市場価値」、「独創性」の5つの評価基準をもとに、EVSを活用したソリューションのアイデア出し、プロトタイプ開発、デモを含めた成果発表を3か月間で行いました。
また、Prophesee社には、EVSカメラの貸与に加え、審査員としても参加いただきました。
本チームでは、EVSの特長であるハイフレームレート、省エネルギーを活かして「高速なデータ読み取りに使えないか」と考え、光無線通信をテーマに設定しました。
文章等の情報を2次元の明滅パターンに変換して、ディスプレイ上で高速に明滅させます。それをEVSで撮影して情報を受信・処理することにより、リアルタイム光通信をカジュアルな環境で実行できる可能性を示しました。複雑な専用機器やネットワーク接続が不要であり、将来的なEVS活用方法として基盤技術開拓を目指してアプリケーションを開発しました。
■活用例
(1)建物内のLED照明に明滅パターンを設定し、地図情報&位置情報を持たせます。EVS搭載のスマートフォン等で照明を撮影することで、地図の取得や自己位置の把握ができます。
(2)独自の信号パターンを持った複数台のロボットが、同時に信号を送受信することにより、位置や状態を把握することができます。
■アプリケーション例:QRコードの3次元化
(左)EVS取得データ (右)EVS取得データを平行化し、デコード実行の様子
Gif:送信データ(1/60倍速)市松模様部分に文字列のバイナリ化がエンコードされている
本チームでは、身近な「ドア」に注目し、EVSを活用することで既存のセンサーでは難しいスマートなドア制御が実現できるのではないかと考えました。
市場調査を行う中で、「物理的な鍵を用いない施錠・解錠の需要」および「スマートな自動ドア制御に対する需要」が大きいことがわかりました。
前者においてはRGBカメラによる顔認証が普及していますが、他人の画像や3Dマスク等で突破されてしまうセキュリティ上の弱点があります。通常、顔の3D形状を認証要素に使用する多要素認証と組み合わせるなどのアプローチがとられますが、追加のセンサーの設置コスト等のトレードオフも存在します。
一方、後者の自動ドアのスマート制御においても、赤外線センサーに加えてRGBカメラを用いて「ドアの前を横に素通りする人に対しては反応しない」等のスマートな制御を行うソリューションもあります。しかし、夜間・逆光シーンや複雑な柄の床があるシーン等はRGBカメラが苦手とするうえに、動画処理が必要となる都合上、消費電力がより多く必要になってしまうリスクも存在します。
そこで、センサーとして”EVSのみ”を用いた「セキュリティ性の高い本人認証」「公共の自動ドアのスマート開閉制御」をテーマに開発を進め、以下のデモンストレーションアプリを完成させました。
・RGBを用いないEVSによる顔認証
・「実際の瞬き」と「モニターに映した瞬き」をEVSで判別する瞬き検知
・EVSによるOptical Flowを活用したドア開閉シミュレーション
EVSで判断する瞬き検知 (瞬きが終わった後に「detect」と表示)
EVSによるOptical Flowを活用したドア開閉シミュレーション
(矢印:進行方向、丸印:予測位置。予測位置がドア領域(画面手前)に入ると、画面枠灰色で判定)
本チームでは、マンションの共有エリアの照明が夜間に常時点灯していることに着眼し、エネルギーの削減ができないかと考えました。
一般的に照明システムには照度センサーや人感センサー等が用いられることがありますが、照度センサーでは周囲の明るさに応じた点灯・消灯しかできないことや、人感センサーでは人が居る場所しか点灯しないため向かう先はまだ暗い状態であること等の課題があります。
そこで、EVSの特性を利用し、安全で無理のない節電可能なスマート照明システムのプロトタイプ開発を行いました。
■EVSの特性
(1)低消費電力(何も変化の無い時は、消費電力はほぼゼロ)
(2)暗くてもセンシング(検出)が可能
(3)RGBカメラとは違い、人の動きを輝度の変化として捉えるため、プライバシーが保護される
EVSを使ったスマート照明システムであれば、50戸のマンションで年間約100万円の電気代削減(共有部の電気代約66%削減)、約15トンのCO2排出量削減が可能になり、SDGsに貢献できると考えています。(モルフォ調べ)
スマート照明システムプロトタイプデモ(1)
Propheseeは、EVSの使用におけるイノベーションと創造性を促進するために、開発者とメーカーのエコシステムに強くコミットしています。当社の発明家コミュニティは現在、世界中で15,000人を超えており、今回のモルフォとのコラボレーションは、まさに当社の技術を実践的に実験・実装することで、機械が見ることを可能にするイノベーションをさらに促進するものです。EVSのエコシステムとMetavisionプラットフォームが可能にするアプリケーションを拡大するために、モルフォと協力できることを嬉しく思います。
Prophesee社は、世界最先端のニューロモーフィック・ビジョン・システムの発明者です。同社は、マシンビジョンへの画期的なイベントベースビジョンアプローチを開発し、この新しいビジョンカテゴリーは、消費電力、遅延、データ処理量を大幅に削減し、従来のフレームベースのセンサーでは今まで見えなかったものを明らかにします。Propheseeの特許取得済みMetavision®センサーとアルゴリズムは、人間の目と脳の働きを模倣し、自律走行車、産業オートメーション、IoT、モバイル、AR/VRなどの分野で効率を劇的に改善します。
360キャピタル・パートナーズ、欧州投資銀行、iBionext、Intel Capital、Omnivision、Prosperity7 Ventures、Renault Group、Robert Bosch Venture Capital、Sinovation、ソニー、Supernova Invest、Xiaomiなど、世界有数の株式投資家や企業投資家の支援を受けています。
モルフォは「画像処理/AI(人工知能)」の研究開発型企業です。高度な画像処理技術を組み込みソフトウェアとして、国内外のスマートフォン、半導体メーカーを中心にグローバルに展開しています。また、カメラで捉えた画像情報をエッジデバイスやクラウドで解析する、AIを駆使した画像認識技術を車載や産業IoT分野へ提供し、様々なイノベーションを先進のイメージング・テクノロジーで実現しています。
所在地:東京都千代田区神田錦町 2-2-1 KANDA SQUARE 11階WeWork内
代表者:代表取締役社長 平賀 督基(まさき)、【博士(理学)】
設立:2004年5月26日
資本金:1,783,958千円(2023年10月31日現在)
事業内容:画像処理およびAI(人工知能)技術の研究・製品開発。スマートフォン・半導体・車載・産業IoT向けソフトウェア事業をグローバルに展開。
ホームページ:https://www.morphoinc.com/
Facebook:https://www.facebook.com/morphoinc