大腸癌は、その深達度(癌が大腸の壁に入り込んだ深さ)によって、治療方針(内視鏡的切除が可能か、外科手術を要するか)が大きく異なります。大腸内視鏡検査において、深達度診断は、一般的に内視鏡医が通常観察に加え、拡大内視鏡、画像強調内視鏡、色素内視鏡などを併用した上で行っています。しかし、拡大内視鏡や画像強調内視鏡は、全ての医療施設に十分に設置されているわけではなく、また、正確な診断には経験が必要とされます。
そこで、今回当社は、千葉大学医学部附属病院消化器内科および臨床工学センター、千葉県がんセンター内視鏡科とともに、通常の内視鏡画像(白色光・非拡大・非色素散布)のみで診断が可能な診断支援システム(Computer-assisted diagnosis system: CAD system)を共同で構築しました。この新たなCAD systemは大腸腫瘍性病変の深達度診断において、正診率が90.3%という非常に良い結果を得る事ができました。
このCAD systemは、拡大内視鏡などの設備が十分でない施設や、内視鏡専門医がいない施設においても、大腸癌の正確な深達度診断を可能にし、最適な治療選択の提供に繋がる可能性が考えられます。今後、更なる良質な多数の内視鏡画像の集積と検証を行うことで、臨床応用への可能性の拡大が期待されます。
Partner voice
千葉大学医学部附属病院・消化器内科の松村倫明と申します。
大腸癌の罹患率・死亡率は日本を含め世界的に増加しており、今後も増加が予想されております。大腸癌と言うと従来は外科手術が必要と考えられておりましたが、昨今の治療技術の進歩から、今まで外科手術を施行していた大腸癌の一部は内視鏡で根治的な切除が出来るようになりました。そのような観点から治療方針を決定する内視鏡診断は、以前にも増して重要となってきております。今回我々は、AI分野で高い技術力と先進性を有するモルフォ社にお声をかけさせて頂き、モルフォ社、千葉県がんセンター、当院臨床工学センターとの共同研究として、新たに大腸癌の深達度診断を行うCAD systemの構築に取り組みました。モルフォ社の皆様方のおかげで、第一弾の成果はアメリカ内視鏡学会誌( Tokunaga M et al. Gastrointest Endosc. 2020)を通じて世界に発信する事ができました。未来の医療を、“より患者さんにやさしく・低侵襲な”方向へと変えるべくモルフォ社とAIの分野で引き続き活動していきたいと考えております。